2006年 2月 20日

北海道森林管理局
 局長 亀井俊水様
檜山森林管理署
 署長 金澤 猛様

(社)北海道自然保護協会
                              会長  佐藤 謙

檜山森林管理署管内見市川流域におけるサクラマス等の保護に関連した
「河床路」改良等の要望書


1.確認された事実と予測される問題点
 貴森林管理署管内の見市川流域は、サクラマス資源保護の目的のために水産資源保護法により水産動物(水生昆虫を含むほとんど全ての動物)の採捕が禁じられた「保護水面」となっている。本河川は、道南の日本海沿岸地域では千走川に次いでサクラマスが豊富であり、その繁殖河川として非常に高く注目されている。北海道内水面漁業調整規則第24条2(4)によると、見市川流域の保護水面は、「本流第2砂防ダムまでの区域及び支流冷水川治山ダム堰堤までの区域、並びに見市川と支流二股川の合流点から上流1,100mの治山ダムの堰堤まで二股川の区域」と決められている。
 上記保護水面のうち、貴局・貴署が管理する支流二股川流域の、二股林道に入って間もない地点における「河床路」は、先般、その補修工事として補強用に「布団篭」が敷設された。金網に石を詰め込んだ構造を持つ布団篭は、流路の下流側に置かれ、河床路を流れ落ちる水は、現在は、布団篭の上を流れている。しかし、道内では河川構造物が設置されたその下流側において「河床低下」が進行する例が多く、見市川流域の各所でも同様な河床低下が認められるので、上記「河床路」の下流側においても、近い将来の河床低下が想定され、それに伴って水が布団篭の中を流れるようになり、魚類の遡上を阻害すると予測される。
 見市川支流の二股川流域では、治山ダム・谷止工などの河川構造物の建設後、サクラマスの産卵に適した「こぶし大の石」が減少し、粗い礫の河床だったところに砂が大量に沈殿するようになった。したがって、サクラマスの産卵床が減少し、その資源に影響が出ている可能性が高い。実際、二股川の「河床路」から上流側の最初の治山ダムの間では、かつてサクラマスの産卵床が多数認められたが、さらに上流に治山ダム・谷止工が建設された後、その産卵床が数ヶ所に減少した。また、治山ダム・谷止工に設けられた「魚道」は、実際には、サクラマス遡上時期に水が流れていない場合や、堆砂などによって魚道として機能していない場合が認められる。
 この二股川では、河川構造物の建設後、「こぶし大の石」が減少したほかに、さらに、河床の石の間に「粒径の細かい砂や泥」が堆積するようになった。サクラマスが産卵するために河床を掘り起こすと、河床から細砂や泥の煙がモクモクと立ち上がるほどである。一般に、このような状態になると、河床の透水性がなくなり、魚類の受精卵が窒息死に至ることが報告されている。このことによっても、サクラマス資源へ影響が危惧される。
 以上、貴局・貴署が保護水面を考慮してこなかった背景の中で、先般の「河床路」の補修工事は、今後、さらにサクラマスの遡上を阻害し、サクラマス資源の減少に拍車をかける危険性を非常に高めたと言える。

2.河床路の敷設を自然環境保全・生物多様性保護の観点から考える
 『北海道林業技術者必携(下巻、北方林業会、1983年)』によると、河床路は、林道の先に開設される一時的な作業道において、流水のある沢などの横断箇所に設けられる構造物である。それには、沢の下流側に「布団篭」を並べて上流側から堆積してくる土砂によって路面を造る「砂利止工」や、路面全体を布団篭で構成し、その内部に流水量に応じたポリパイプまたはコルゲートパイプを敷設する「布団篭工(管使用)」などが含まれている。問題の河床路は、前者の「砂利止工」に該当するものと思われる。また、これらの構造物に対して、沢に末木枝条などを利用した「めくら暗渠」を行ってはならないと書かれている。他方、上記の文献には、河床路が設けられる作業道でも、一時的敷設ではなく搬出施設から生産基盤として林道と同様に車道として長期間利用されるようになることから、安全で低コストでなければならないとも書かれている。実際、貴局・貴署では、作業道が林道に格上げされた例が認められる。
 しかし、林野行政の基本方針が「森林の持つ公益的機能(自然環境保全・生物多様性保護を含む)の重視」に変わった現在、作業道の開設や河床路の敷設においても、それらの自然環境や生物多様性に及ぼす影響については十分に調査検討し、極めて慎重に対応しなければならない。正規の林道における橋脚やコルゲートパイプ、また作業道の河床路でも、河川に関連した構造物は、その大小にかかわらず、河川生物の移動・遡上を妨げる構造物となる場合は、自然環境保全・生物多様性保護の観点からその建設・敷設を根本的に見直す時期にある。
 しかも、河川上流域において、流路の河床に床固工ともいえる構造物、しかも布団篭のように短期間しか維持できない金網構造物を敷設することは、破損していく金網によって、河川生物はもちろんのこと、河川周辺に生息する他の生物や河川管理それ自体への影響も考えられるので、河川において「布団篭」を使用した構造物を敷設することは、基本的に避けなければならない。

3.要望内容
 当会は、この問題を総合的に検討した結果、北海道森林管理局ならびに檜山森林管理署に対して以下の3点を要望するので、貴局・貴署の見解を早急に回答いただきたい。
 (1)見市二股林道における「河床路」において、魚類の遡上を妨げない構造物にすること。すなわち、川を大きくまたぐ橋梁構造にする・橋梁を支える橋脚は河川内につくらず川を大きくまたぎ、橋台は川岸から離したところに置く・橋台が堤外に面していればコンクリートブロックなどで補強する必要が出てくるが、堤内側に橋台を置けば橋台の周りの補強は必要なくなるという構造物である。
 (2)林道および作業道における河川を横断する構造物の全体について、自然環境保全・生物多様性保護の観点から科学的な検討をされ、その結果を公表すること。
 (3)上記とともに治山ダム・床固工等の河川構造物にも関連したサクラマス等の保護対策について、水産動物・魚類の専門家を交えて科学的・綿密な検討をされ、その結果を公表すること。