札幌市長 上田 文雄 様
(札幌市市民まちづくり局都市計画部地域計画課御中)
2005年9月5日
(社)北海道自然保護協会
会長 佐藤 謙
                       
「用途地域等の見直し素案」に対する意見

建築物の高さの最高限度制限に対する意見

 (意見)

円山・藻岩山の眺望景観を確保する制限を設けること
(具体的内容)@地下鉄円山公園駅付近から円山公園に至るアプローチを視点場として
円山の眺望景観を守るため、A中島公園および真駒内公園を視点場として藻岩山の眺望を確保するため、それぞれの視点場から眺望対象である円山・藻岩山のスカイラインを破るような高層建築物を制限する制度を設けること。

(理由)
1 円山・藻岩山は札幌の都市景観を特徴づける重要なランドマーク

円山・藻岩山・手稲山は札幌市の都市景観形成上、その地形的特徴を象徴的に表現する主要なランドマークである。札幌市が定めた「大規模建築物等景観形成ガイドライン」の「札幌市景観構造図」でも、円山・藻岩山・手稲山を「主要なランドマーク」に選定し、主要な道路などの「景観軸をとおして見渡す、山並みや街のランドマークから、季節感や方位、奥行を読み取ることができる」ので、その「見通しに配慮すること」が求められている。
なお円山・藻岩山・手稲山のおよその標高オーダーは250m、500m、1000mであるが、とくに標高の低い円山、藻岩山は高層建築物による遮蔽の影響を受けやすいので、その眺望景観確保は、都市計画政策上の配慮が必要である。

2 現実の札幌の都市計画は円山・藻岩山の眺望景観確保に逆行
札幌の都市計画は「自然との共生」をうたいながらも、現実には地下鉄沿線や主要道路沿線での土地利用の高度化を図るとの理由で、円山・藻岩山などのランドマークを遮蔽するような高層建築物を誘発させる施策がとられてきた。そのため、いわゆるマンション問題が頻発したことは周知の事実であり、今回の高度地区制度導入も、それがひとつの要因になっていると思われるが、今回の高度地区素案では、ランドマーク遮蔽の解決策とはなっていない。例えば、円山・藻岩山は市街地から西方に眺められる場合が多いが市街地西方を南北方向に走る環状通り沿線は、今後とも眺望景観を妨げる高層建築物が誘発される素案となっている。したがってその沿線のうち、円山・藻岩山の眺望景観に関係する部分は、より低いランクの高度地区に変更する必要がある。
また、円山公園東側の一帯は、旧来は第1種低層住居専用地域で高さ10m以内の建築物しか建てられなかったのに、土地利用の高度化を理由に第1種中高層住居専用地域に変更されたため、円山の眺望景観が妨げられるようになっている。しかし今回の素案では、その解決策が示されていないので、当該箇所は少なくとも24mの高度地区を導入する必要がある。

3 主要な公園を視点場として円山・藻岩山の眺望景観を確保する施策が必要
現実の問題として市街地での高層建築物の出現傾向を、全面的に規制することは困難なので、市内の主要な都市基幹公園を視点場として、円山・藻岩山・手稲山などのランドマーク眺望景観を確保する施策が必要である。例えば大通公園からの円山、中島公園・真駒内公園からの藻岩山、前田森林公園からの手稲山などが想定されるが、その具体的な検討は都市計画部だけではなく緑化推進部などが積極的に関与し、札幌市としての総合的な施策として進められるべきである。
当面、協会としては、中島公園および真駒内公園からの藻岩山の景観を確保するため、そのスカイラインを破る高層建築物の高さ制限の導入を提案する。ちなみに中島公園内にKitara(音楽ホール)が設計された際は、中島公園から藻岩山の眺望を妨げないよう、その高さが抑えられた事実経緯があるが、公園区域外での高層建築物規制の都市計画が連動しなければ、その設計意図も無意味となってしまう。

4 これらの施策は札幌市の都市計画の基本にかかわるもので、地区計画レベルで解決すべき問題ではない

「土地の使い方のルールが変わります」のパンフレット7ページのQ&Aでは、「今回の制限は、全市を見渡して共通の考え方で定める基本的なルールです。そのためさらに地域の特性に応じた高さのルールが必要な場合には、住民のみなさんと一緒に地区計画などのルールづくりをしていきたい」と書かれているが、札幌市の都市景観を構成する主要なランドマークの眺望確保は、マスタープランレベルの基本的事項であり、地区計画レベルで解決すべき問題ではない。
すなわちこの高さ制限の受益者は、その地区に生活する住民だけでなく、全市民、そして市外からの来訪者とくに全国から札幌を訪れる観光客が札幌に好印象を残すか否かの、観光都市札幌の基本政策に深くかかわる問題である。しかし今回の素案では、その基本的な視点が完全に欠落している。
それらのことは、欧米の主要都市の都市景観政策を見れば明白となる。例えばロンドンでは、市周辺の丘陵から市内の主要なランドマークであるセントポール大聖堂や国会議事堂を眺望できるよう、戦略的眺望(Strategic View)として、ビューイングコリドーという視野範囲を設け、その眺望を確保している。またパリでは、シャンゼリゼ通りからの凱旋門など、主要なランドマークなど特別な意味をもつ景観の中に、それを阻害する建築物が侵入することを制限するフュゾー規制制度を設けている。さらにバンクーバー市では、市街南部から市街北側にある山並みのスカイラインの眺望景観が妨げられることのないよう、主要な展望地点からのビューコーンという視野範囲内の高層建築物を規制する制度を導入している(詳しくは西村幸雄他『都市の風景計画・欧米の景観コントロール手法と実際』学芸出版社、2000などを参照)。
これら欧米における規制制度は、その都市の景観政策の基本的戦略に関係するもので、決して地区計画レベルのものではない(地区計画レベルの規制は別途に存在する)。
したがって「自然との共生」をうたい、また観光客の増大を期待する札幌市でも、札幌市を特徴づける円山・藻岩山などのランドマークの眺望景観を確保する都市計画がきわめて重要である。


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