室蘭土木現業所長
北海道 知事
小室  裕一 様高橋はるみ 様
2005年3月22日

社団法人北海道自然保護協会  会長   佐藤  謙
ポンオサツ(ユオイ沢)川の砂防計画に関する再質問・再要望書

 当協会は、昨年11月、ポンオサツ(ユオイ沢)川の現地調査の結果、この砂防ダム建設が本当に必要なのか疑問視されましたので、「当計画の目的と必要性に関する根拠を明確な資料によって説明していただくこと」を、貴機関に求めました。また、建設の根拠となる土砂流出について、「この河川における土砂移動量に関する具体的な調査結果とそれに基づく災害予測結果について、調査資料とその科学的分析によって説明されること」を求めました。さらに、河川法改正後、河川工事において自然環境の保全対策が講じられるようになり、本件に関しても事前の生物調査や自然環境調査が行われたと思われますので、それらの調査結果について説明を求めました。
 今年1月、貴機関よりご回答を頂きましたが、上記の内容に関する回答としてはまことに不十分で説得力がありませんでしたので、ここに、再度、質問させていただきます。近年、河川法改正後の河川行政は、治水・利水・自然環境の保全という3つの目的に対して、開かれた論議が行われるようになりました。その状況下で、前回のご回答は、河川法改正以前の不十分なものと同じものと捉えております。貴機関におかれましては、この再質問・再要望に対して十分なご説明をいただけますよう、お願い申し上げます。

.「事業計画」について

事業計画についてご回答をいただきましたが、当計画の目的と必要性に関して根拠となる資料がまことに不十分ですので、ご提供いただきたい。また、砂防ダムの事業規模を立案するにあたり、雨水の流出量や土砂移動量が算定されていると思われますが、それらの科学データを示していただきたく、再度、要望致します。

.「上流の牧草地」について
 当協会の調査によりますと、ポンオサツ川は、比較的狭い流域しかないにもかかわらず、上流域に牧草地が広い面積を占めております。この牧草地の開墾は、雨水流出量や土砂移動量の変動に深く関わっていると考えます。しかし、ご回答では、雨水の流出量に深く関わる「上流の牧草地」に関する説明がまことに不十分でした。
 そのため、第一に、流域全体における牧草地が占める割合はどの程度であるか、第二に、牧草地の開墾がいつ行なわれたのか、第三に、上流に牧草地がある場合と無い場合に、前項1に述べた雨水の流出量や土砂移動量が異なる値に算定されたと思いますが、それらのデータはどうなっているのか、以上の3点に関するデータを明示していただきたい。

.「牧草地」と「近年の災害」の関係について 

 ご回答では「上流の牧草地」が「近年の災害」にどの程度影響したのか、まったく不明です。「平成13年9月の台風15号に伴う豪雨による下流域の河岸崩壊」と、「平成15年8月の台風10号による豪雨による護岸工の被災」について、上流の牧草地からの影響は、牧草地がある場合と無い場合に、出水の程度に違いが現れる、すなわち、流出係数が異なりますから、その違いがどの程度あったのか、ご説明いただきたい。

河川の生物について

 調査結果に示されたエゾサンショウウオ(幼生)とニホンザリガニの生息は、この川が「少なくとも最近までは」安定した川であることを明示しております。第一に、エゾサンショウウオの幼生は、この川が同種の明らかな繁殖場であることを示しており、幼生が成体になって陸上生活ができるまでの相当期間、この川が安定していることを物語っています。第二に、ニホンザリガニの生息は、その生態的特性から、この川に大小の湧き水があり、それらの「湧き水」は湿潤状態がデリケートに変化しながら、安定した水循環が維持されてきたことを明示しています。
 上に「少なくとも最近までは」と記した理由は、第一に、エゾサンショウウオとニホンザリガニが生息し繁殖が可能である河川は土砂移動などの災害が発生する環境をまったく示しませんので、いま、これらが生息・繁殖しているならば、少なくとも「現在でも」災害が発生しない良好な河川環境が維持されていることを示します。第二に、牧草地が開墾される以前の過去にだけ、上記種が生息・繁殖していたのであれば、上流の牧草地の開墾後に、その影響が顕在化したと考えることができます。貴機関におかれては、以上について、明確な資料に基づいて説明していただきたい。

.山田孝・北海道大学助教授(砂防学、札幌)による「私の発言:砂防ダムと自然保護:功罪、科学データを基に論議を」について
 去る2004年11月13日の北海道新聞夕刊に、標記の記事が掲載されました。この記事は、治水が果たす「人々の安全確保」を目的とした砂防学の専門家が書いたものであり、自然環境保全の専門家が書いたものではありません。しかし、その記事には、「砂防ダムを施工する前に、土砂がどれくらいの規模でどのように移動したのか、生物の生息状況はどうだったのか」を知ることが大切だと述べられております。また、「調査研究の成果は公開し、だれでも理解されるような易しい言葉で説明することが治山・砂防関係の事業者、研究者の重要な責務である」と述べられております。
 山田助教授は、さらに「治山・砂防の事業者と研究者、住民、自然保護団体が一堂に会して、科学データを様々な視点から論議し合い、問題解決のための具体策の提案に向けて、合意できるようなシステムと手法をできるだけ早く構築すべきである」と述べております。これは、いろいろな立場から新たな視点・知見を入れて深い論議をする必要があるという指摘になります。この観点は、当会だけではなく、貴機関にとって重視すべきです。
.質問・要望に関するまとめ

 以上に述べましたように、比較的狭い流域を持つポンオサツ(ユオイ)川において、雨水の流出と土砂移動の面から当該河川の現況を把握し、また、希少生物や自然環境の保護・保全の面から河川の現状を把握し、そして、地元の人々にとって最大関心事となる「災害が起きる可能性があるのか、あるいはないのか」について、河川に関わる行政サイド、貴機関が先に、それぞれ詳細な科学データも示す必要があります。とくに、人命財産に影響を与える災害を防ぐ観点と自然環境を保全する観点の両者に関する、冷静かつ客観的に判断できる資料を公にして、十分に説明する必要があると考えます。

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