札幌市長 上田 文雄 様
2005年1月20日
社団法人北海道自然保護協会  会長   佐藤  謙
円山の眺望景観を無視した不当な都市計画の是正を求める要望・質問書

 このことに関して当協会では、2000年8月3日づけで「札幌市の都市計画において円山公園など『中央部の緑』を良好に保全するための施策を明確にし、かつ実行することを求める要望・提案書」を提出、さらに同年8月28日づけで「円山の眺望景観を無視した不当な都市計画の疑義に関する質問書」を提出いたしました。
 その質問書に対して2000年11月17日づけ札市声第 431号で札幌市長(桂信雄)から回答書が寄せられました(別添資料@〜B)。しかしこの回答は質問の主旨をそらし、問題の核心にはまったく答えず、説明責任を果たしたとはいえない内容でありました。
 ところで本年(2005年)は、札幌市が「用途地域の見直し」を行う予定があると仄聞いたしましたが、2000年8月に当協会が問題提起したことは、この見直しの機会に是正すべきと考えます。したがって2000年8月3日の要望書および8月28日の質問書の主旨にもとづき、あらためて「円山の眺望景観を無視した不当な都市計画の是正」として、
 @「円山地区」の(旧)第一種住居専用地域は、用途地域見直し当時に札幌市が示していた「新用途地域指定の基本方針」のとおり(新)第一種低層住居専用地域とすること
 A(旧)第一種住居専用地域に該当しないが、円山の眺望景観にとって重要な地域は眺 望景観が確保できるよう、例えば、風致地区隣接地域は一般市街地との間の緩衝地帯として機能するような高さ制限やデザイン規制を導入すること
 B 当該地域には、新しい「景観法」にもとづく「景観地区」の導入など同法の活用を積極的に検討することを要望いたしますので、よろしくご検討くださるよう、お願い申しあげます。

 また2000年11月17日づけの札幌市長回答書は、問題の核心に答えておりませんので、あらためて下記のとおり、
@「円山地区」の用途地域変更は、都市計画法改正の主旨および札幌市長期計画の基本に反すること
 A「円山地区」では「土地の高度利用」より「低層の住環境保護」を優先させなければならない必然性があること
 B「円山地区」の都市計画は不当、不適切なので是正すること
を質問いたします。なおこの質問項目は前回と同様ですが、今回の質問の主旨は下記各項目の説明文の最後に太字としてありますので、その太字部分の主旨をそらさず、早急に明確なご回答をくださるよう、お願い申しあげます。
 さらに前回も「回答に当たっては単に担当部局が事務的に処理するのではなく、市政の最高責任者が加わって、21世紀の札幌の好ましい都市像を見据えながら、大所高所から判断されるよう要望」いたしましたが、とくに今回は2000年当時とは市長が交替しており、また2004年には新たに「景観法」が成立し、良好な都市景観を維持・形成すべき「地方公共団体の責務」がいっそう強まっているなど客観情勢も変化しておりますので、この点も踏まえて行政の説明責任を果たし、事務的な回答を行わないよう付記いたします。

1 「円山地区」の用途地域変更は、都市計画法改正の主旨および札幌市長期計画の基本に反すること
 「円山地区」は(旧)第一種住居専用地域で、高さ10mを超える建築物は建てられない高度地区の制限を受け、良好な低層住宅地域であった。しかし1996年の用途地域変更により、当該地域は(新)第一種中高層住居専用地域となり、高さ制限が撤廃されたため、既存の低層住居群に混在して高層マンションが続出することが合法化され、旧来の住環境はいちじるしく悪化した。
 ところで1996年の用途地域変更は1992年の都市計画法・建築基準法改正を受けて行われたものであるが、この法改正は、バブル経済当時の「地価高騰の過程で事務所その他の業務系建築物が無秩序に進出したことによる住宅地の地価上昇、住環境の悪化」などが生じたことに対応し、「適切に住環境の保護」をはかることを主旨として行われたものである(1993年6月25日、建設省都市局長から札幌市長あて「用途地域及び特別用途地域に関する都市計画の決定・運用等について」の通達)。したがって「改正後の用途地域への移行方針」の「移行基準」(同通達の別紙2)でも「旧第一種住居専用地域の区域については低層住宅の保護を図る観点から、第一種低層住居専用地域を定めるものとする」と明記されている。
 また札幌市は自ら編集・発行した『地区計画だより』(10、1994)で「都市計画法・建築基準法の改正により、適切な住環境を保護するため、用途地域制度が抜本的に見直されました」と市民にPRし、さらに札幌市が示した「新用途地域指定の基本方針」でも、(旧)第一種住居専用地域→(新)第一種低層住居専用地域のパターンを明記している。
 それにもかかわらず札幌市は、「円山地区については、都心から近距離に位置し徒歩圏内に地下鉄駅があるなど優れた利便性を備えていること、また戸建住宅以外の土地利用状況も多く見受けられることから、土地の高度利用を図る」ため(2000年11月17日、札幌市長から当協会あて回答)、(旧)第一種住居専用地域から、(新)第一種低層住居専用地域ではなく、基本方針を逸脱した(新)第一種中高層住居専用地域に変更し、高さ制限を撤廃してしまったのである。その理由のひとつとして「戸建住宅以外の土地利用状況も多く見受けられる」ことが挙げられているが、そもそも法改正は、バブル経済によりそのような土地利用が多く出現した実態に対処するよう、「良好な住居環境を保護するため」に「住居系用途地域の細分化」が行われたのである(前記、建設省都市局長通達)。そのため円山地区では「低層」の環境が維持できるように、札幌市が示した「新用途地域指定の基本方針」のとおり(新)第一種低層住居専用地域に移行すべきことは当然である。
 したがって高さ10m以上の建築物を建てられぬ地域で、高さ制限を撤廃し、低層住宅群の中に高層マンションを混在させ、眺望障害、日照障害、ビル風障害その他の問題を惹起させるような、そして現実に地域住民とマンション開発業者が深刻な対立を招き、トラブルに発展しているような「土地利用の高度化」が、なぜ、どのように「適切に住環境を保護」する法改正の主旨と整合するのか、具体的で明確な説明を求めるものである。なお後段の「札幌市長期計画の基本」との関係は質問2に包含する。
「円山地区」では「土地の高度利用」よりも「低層の住環境保護」を優先させなければならない必然性があること

 前記のように(旧)第一種住居専用地域(高さ10m以下)を(新)第一種中高層住居専用地域(高さ制限なし)に変更したため、円山地区では高層マンションが林立し、ついには高層マンション群が壁のように円山周辺をとりまき、円山の眺望景観がいかに妨げられようとも、それらはすべて「合法」であるという都市計画となってしまっている。
 ところで円山・藻岩山の景観は、札幌の都心部から眺望できる「札幌の緑の象徴」で天然記念物に指定されていることは、いまさら言及するまでもない。現に札幌市が策定し、札幌市民に協力を呼びかけている「大規模建築物等景観形成指針ガイドライン」でも、円山・藻岩山・手稲山を「主要なランドマーク」に選定した上で、「山の頂などのランドマークは、札幌の地形的特徴を象徴的に見せ、街の方向性を与えてくれます」とし、それらの山並みなどの「緑は、町並みの背景となって四季を彩り、札幌の景観を特徴づける貴重な資源です」と説明し、「ランドマークへの見通しに配慮する」ことを求めている。
 その主要なランドマークである円山の山麓には、円山公園、動物園、運動競技場、野球場、北海道神宮などがあるため、また円山の自然に親しむため、多くの市民は地下鉄を利用して円山公園駅で下車し、徒歩で円山方面に向かうが、そのアプローチでは「町並みの背景となって四季を彩り、札幌の景観を特徴づける貴重な資源」である円山を眺望し、楽しみながら、円山公園に近づいている。そしてその眺望景観は、円山地区が「低層」の建築物しか建てられない都市計画があってこそ、維持が可能なのである。
 そしてまた札幌市は、1996年の用途地域変更当時の「第三次札幌市長期計画」の基本課題として、「札幌の都市個性を形成」している「自然的特性を、今後のまちづくりに積極的に生かす」ことを謳いあげている。円山公園駅から円山公園に至るアプローチから、円山の眺望景観を楽しめるように「積極的に生かす」都市計画こそ、札幌市の長期計画の主旨にそう重要な施策のひとつに他ならない。
 このように円山地区は、「低層の住環境保護」を優先させなくてはならない必然性が厳然と存在しているのである。
 それにもかかわらず札幌市は、円山地区の用途地域の変更で、前記のように高さ制限を撤廃し、高層マンションの建築を誘発する「土地の高度利用」をはかる都市計画を導入して、円山のランドマーク景観を損ねることを合法化してしまった。これは「改正後の用途地域の切替えに当たっては、今後再びこのような問題(住環境の悪化)が生ずることのないよう、安易な規制緩和とならないよう十分留意した上で速やかに行うこと」(前記・建設省都市局長通達)という法運用の基本にも反する安易な規制緩和といわざるを得ない。 したがって円山地区では、なぜ、どのような理由で「低層の住環境保護」より「土地の高度利用」を優先させなくてはならない必然性・合理性が存在するのか、具体的で明確な説明を求めるものである。

「円山地区」の都市計画は不当、不適切なので是正すべきこと

前記1、2で述べたように、現在の円山地区の都市計画は、明らかに不当、不適切である。したがって2005年の「用途地域の見直し」に当たっては、
 @(旧)第一種住居専用地域は、札幌市が示した「新用途地域指定の基本方針」のとおり(新)第一種低層住居専用地域に変更すること
 A(旧)第一種住居専用地域に該当しないが、円山の眺望景観にとって重要な地域は眺望景観が確保できるよう、例えば、風致地区隣接地域は一般市街地との間の緩衝地帯として機能するような高さ制限やデザイン規制を導入すること
 B 新しい「景観法」にもとづく「景観地区」の導入など同法の活用を積極的に検討すること
などの是正措置を講ずべきである。
 ちなみに国土交通省が監修した『概説・景観法』(ぎょうせい、2004)の「景観法制定の背景と目的」には、「わが国のまちづくりは、…経済性や効率性、機能性が重視された結果、美しさへの配慮を欠いていたことは否めません。しかし、近年、急速な都市化の終息に伴って、美しい町並みなど、良好な景観に関する国民の関心が高まり、いわば価値観の転換期を迎えています」と、法制定の背景が解説されている。
 円山地区の都市計画は、前記の札幌市長回答書のように「都心から近距離に位置し徒歩圏内に地下鉄駅があるなど優れた利便性を備えていること」を理由に「土地の高度利用」を図ったものであるから、まさに「経済性や効率性、機能性が重視された結果、美しさへの配慮を欠いていたことは否めません」という指摘にぴったりと符合する悪例である。
 前文にも記載したとおり、2000年当時に比べると、都市景観に対する社会的関心は高まり、住民の意見反映、行政の説明責任も、より重要視されるようになっている。また札幌市長も交替している。
 したがって、そうした時代の変化や価値観の変化を踏まえた上で、新しい札幌市長はこの問題にどのように対処しようとするのか、具体的な見直し内容はこれから検討されるのであろうが、それに先立ち、前記1、2に対する認識を含め、新しい市長の基本的な見解をまず披露していただきたい。

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