環境省西北海道地区自然保護事務所  所長 鍛冶哲郎 様
2004年3月1日
(社)北海道自然保護協会 会長  俵 浩三
「宗谷岬ウィンドファーム」建設に関する要望書
 最近、国内、とくに北海道では新しいエネルギー源として風力発電施設の建設が盛んに行われております。風力発電は、化石燃料・原子力に替わるエネルギーとして大きなメリットがあると喧伝されておりますが、一方で、大型風車など諸施設の建設が自然環境に与える影響も大きいと危惧されております。
 この4月に建設着工が予定されている「宗谷岬ウィンドファーム」の風力発電施設は、国内最大級の規模でありながら、環境影響評価がまったく不十分のままに建設されようとしており、自然保護の上で大きな問題と考えます。この事業計画は、事業者が稚内市の定める「稚内市風力発電建設ガイドライン」に基づいて一応の調査を行い、それを元に「影響は回避もしくは低減できる」と結論づけられております。しかし、その報告書を見る限りでは、そのように判断するだけの十分な調査が行われていないため、根拠を欠く結論となっております。
 「宗谷岬ウィンドファーム」計画について、現状の計画通りに進めることは、以下の理由に挙げるように、我が国、そして北海道の自然保護行政にとって将来に大きな禍根を残すことになると判断しますので、以下の2つを要望いたします。

(1)この計画は、建設の是非を含んで、環境省において十分に議論・検討すべき問題を有することから、環境省として本事業計画に対する慎重な対処を要望します。
(2)風力発電施設の建設は、環境影響評価の対象とすべきであるので、それに関する法令において面積による制限を廃止することを要望します。
要望理由
1.宗谷岬一帯は、鳥類、特にオジロワシとオオワシの渡り中継地点として重要であるため、自然保護の上から極めて貴重である
 宗谷岬は、日本最北端としての地理的特性から、北海道や日本に渡ってくる多くの渡り鳥の重要なルート上にあります。特にオジロワシとオオワシに関しては、平成2年にまとめられた「特殊鳥類調査報告書(環境庁)」に報告されている通り、北上または南下する際に利用する重要な地域であることが明らかにされています。また、その後も未発表ですが、希少な鳥類に関する貴重な記録が蓄積されています。
2.オジロワシとオオワシは、絶滅が危惧される希少種である
 オジロワシとオオワシは、ともに絶滅が危惧される猛禽類であり、国内では各種法令による指定種、またはレッドリスト掲載種とされております。これら2種は、種の保存法によって「国内希少野生動植物種」に、文化財保護法によって国指定天然記念物に指定されており、環境庁レッドリストでは絶滅危惧TB類または同U類、北海道レッドリストにおいては絶滅危惧種とされております。従って、両種は、保護を優先すべき鳥類と判断します。オオワシに関しては、最近の研究によって、北海道が重要な越冬地のひとつであることが明らかにされています。
3.風力発電施設の鳥類に与える影響は、非常に大きいと危惧される
 風力発電施設の建設計画は、上記の希少種である鳥類の渡りや生息に対して、移動ルートの恒久的な撹乱要因、バードストライク、騒音など多大な影響をおよぼす危険性が高いと考えられます。オジロワシとオオワシの渡りのルートとなっている宗谷岬(宗谷丘陵)に国内最大規模の風力発電施設が建設されることは、渡りに多大な影響をおよぼす危険性があるばかりでなく、両種にとって種の存続に悪影響が及ぶことも否定できません。
4.標記の風力発電施設の建設計画は、国内の既存施設や計画と比較して、最大級の規模であり、前項に挙げた鳥類に与える影響は計り知れない
 当該地域に計画された風力発電施設は、合計5万5000kwの発電を行う、風車57基を建設する計画と公表されております。この計画の規模は、国内最大であり、道内の既存施設の多くが1地域数基以内と小規模であり、現在まで道内最大規模となる幌延と江差の28基、苫前の20基と比較しても、倍以上の例をみない規模となっております。従って、この風力発電施設の建設計画は、希少な鳥類に対して計り知れない影響を与えるものと、大きな危惧が生じます。
 本事業予定地は、高さ100m以上、直径が5〜60mの風車が57基も建設されますので、立体的に、広域にわたって、環境変化が生じることは明白です。事業計画は、渡り鳥が日本へ最初に上陸する場所の自然の構造を決定的に変化させますので、絶滅危惧種であるオオワシ、オジロワシなど猛禽類を初めとして、多くの鳥類への影響が危惧されることは当然です。以上の指摘は、野鳥専門家だけではなく野鳥観察を楽しむ人々など、多くの方から発せられているところです。
5.基本的に、風力発電施設の建設には環境影響評価が義務づけられるべきである
 この風力発電施設は、完成すると、風車57基、発電出力5万5000kwの国内最大規模になります。本事業は、総工費120億円のうち国庫補助約31億円が見込まれておりますので極めて公共性が高く、いわば大型公共事業と判断します。
 しかしながら、本事業を含み風力発電施設の建設に関しては、環境影響調査が義務づけられておりません。国および北海道の環境影響評価に関する法令は、一風車の占める小面積だけ、風車それぞれの小さな投影面積だけが判断材料とされており、風力発電施設が広域にわたって建設されても風車それぞれが「点」として捉えているようです。すなわち、環境影響評価に関わる法令は、現状では、風車それぞれが占有する面積が小さいと判断するため、風力発電施設の建設は、環境影響評価を回避でき、いわば無制限に推進されていくことになります。
 以上の、大型公共事業でありながら環境影響評価をまぬがれる実態は、大きな「法の穴」であり、自然保護行政の重大な欠陥であると言わざるを得ません。先般、環境省では、国立公園内における風力発電施設の建設について規制方針を発表しました。それは、風力発電施設の建設には自然保護上の問題があると認めたからと判断できます。しかし、国立公園外の地域における風力発電施設の建設に対して、国および北海道の環境影響評価に関する法令が効力を発揮しない現状は、大きな問題です。
 ちなみに、北海道では、すでに日本海側を中心に多数の風車が建設されており、いずれも事前の十分な自然環境調査および慎重な検討が行われませんでした。すでに、苫前、江差、室蘭など、大陸−北海道−本州間の渡りのルートにあたる地域において、多数の風車が建設され、環境影響評価が必ず必要であることがより鮮明になっております。現行法令の欠陥を埋めることは、全国的な課題となっております。
 従って、まず、環境影響評価に関して、面積の制限を廃止し、面積の如何にかかわらず、環境影響評価として自然環境調査の実施を義務づけることを要望します。
6.環境省みずからが十分に検討し、種の保存に関する積極的な対応をすべきである
 本事業計画については、事業者が稚内市の定める「稚内市風力発電建設ガイドライン」に基づいて一応の調査を行い、それを元に「影響は回避もしくは低減できる」と結論づけております。しかし、その報告書を見る限りでは、そのように判断するだけの十分な調査が行われていないため、根拠を欠く結論となっております。他方で、我が国または北海道が指定する「希少野生動植物」に関して、環境影響評価に関わる法令の他に、種の保存法、北海道希少野生動植物保護条例、あるいは文化財保護法があります。特に本事業計画によるオジロワシやオオワシへの影響に関しては、環境省は、内部の検討委員会または第三者機関を設置して、専門家による慎重な検討が必要であると考えます。
 「宗谷岬ウィンドファーム」計画を現状の計画通りに進めることは、我が国、そして北海道の自然保護行政にとって将来に大きな禍根を残すと判断します。ここに、建設の是非を含めて、環境省として本事業計画に対する慎重な議論と検討を行われますよう、強く要望する次第です。
北海道知事 高橋はるみ殿
2004年3月1日
(社)北海道自然保護協会 会長  俵 浩三
「宗谷岬ウィンドファーム」建設に関する要望書
最近、国内、とくに北海道では新しいエネルギー源として風力発電施設の建設が盛んに行われております。風力発電は、化石燃料・原子力に替わるエネルギーとして大きなメリットがあると喧伝されておりますが、一方で、大型風車など諸施設の建設が自然環境に与える影響も大きいと危惧されております。
 この4月に建設着工が予定されている「宗谷岬ウィンドファーム」の風力発電施設は、国内最大級の規模でありながら、環境影響評価がまったく不十分のままに建設されようとしており、自然保護の上で大きな問題と考えます。この事業計画は、事業者が稚内市の定める「稚内市風力発電建設ガイドライン」に基づいて一応の調査を行い、それを元に「影響は回避もしくは低減できる」と結論づけられております。しかし、その報告書を見る限りでは、そのように判断するだけの十分な調査が行われていないため、根拠を欠く結論となっております。
 「宗谷岬ウィンドファーム」計画について、現状の計画通りに進めることは、以下の理由に挙げるように、我が国、そして北海道の自然保護行政にとって将来に大きな禍根を残すことになると判断しますので、以下の2つを要望いたします。
(1)この計画は、道庁内で建設の是非を含んで、十分に議論・検討すべき問題を有することから、本事業計画に対する北海道としての慎重な対処を要望します。
(2)風力発電施設の建設は、環境影響評価の対象とすべきであるので、それに関する法令において面積による制限を廃止することを要望します。
要望理由
1.宗谷岬一帯は、鳥類、特にオジロワシとオオワシの渡り中継地点として重要であるため、自然保護の上から極めて貴重である
 宗谷岬は、日本最北端としての地理的特性から、北海道や日本に渡ってくる多くの渡り鳥の重要なルート上にあります。特にオジロワシとオオワシに関しては、平成2年にまとめられた「特殊鳥類調査報告書(環境庁)」に報告されている通り、北上または南下する際に利用する重要な地域であることが明らかにされています。また、その後も未発表ですが、希少な鳥類に関する貴重な記録が蓄積されています。
2.オジロワシとオオワシは、絶滅が危惧される希少種である
 オジロワシとオオワシは、ともに絶滅が危惧される猛禽類であり、国内では各種法令による指定種、またはレッドリスト掲載種とされております。これら2種は、種の保存法によって「国内希少野生動植物種」に、文化財保護法によって国指定天然記念物に指定されており、環境庁レッドリストでは絶滅危惧TB類または同U類、北海道レッドリストにおいては絶滅危惧種とされております。従って、両種は、保護を優先すべき鳥類と判断します。オオワシに関しては、最近の研究によって、北海道が重要な越冬地のひとつであることが明らかにされています。
3.風力発電施設の鳥類に与える影響は、非常に大きいと危惧される
 風力発電施設の建設計画は、上記の希少種である鳥類の渡りや生息に対して、移動ルートの恒久的な撹乱要因、バードストライク、騒音など多大な影響をおよぼす危険性が高いと考えられます。オジロワシとオオワシの渡りのルートとなっている宗谷岬(宗谷丘陵)に国内最大規模の風力発電施設が建設されることは、渡りに多大な影響をおよぼす危険性があるばかりでなく、両種にとって種の存続に悪影響が及ぶことも否定できません。
4.標記の風力発電施設の建設計画は、国内の既存施設や計画と比較して、最大級の規模  であり、前項に挙げた鳥類に与える影響は計り知れない
 当該地域に計画された風力発電施設は、合計5万5000kwの発電を行う、風車57基を建設する計画と公表されております。この計画の規模は、国内最大であり、道内の既存施設の多くが1地域数基以内と小規模であり、現在まで道内最大規模となる幌延と江差の28基、苫前の20基と比較しても、倍以上の例をみない規模となっております。従って、この風力発電施設の建設計画は、希少な鳥類に対して計り知れない影響を与えるものと、大きな危惧が生じます。
 本事業予定地は、高さ100m以上、直径が5〜60mの風車が57基も建設されますので、立体的に、広域にわたって、環境変化が生じることは明白です。事業計画は、渡り鳥が日本へ最初に上陸する場所の自然の構造を決定的に変化させますので、絶滅危惧種であるオオワシ、オジロワシなど猛禽類を初めとして、多くの鳥類への影響が危惧されることは当然です。以上の指摘は、野鳥専門家だけではなく野鳥観察を楽しむ人々など、多くの方から発せられているところです。
5.基本的に、風力発電施設の建設には環境影響評価が義務づけられるべきである
 この風力発電施設は、完成すると、風車57基、発電出力5万5000kwの国内最大規模になります。本事業は、総工費120億円のうち国庫補助約31億円が見込まれておりますので極めて公共性が高く、いわば大型公共事業と判断します。
 しかしながら、本事業を含み風力発電施設の建設に関しては、環境影響調査が義務づけられておりません。国および北海道の環境影響評価に関する法令は、一風車の占める小面積だけ、風車それぞれの小さな投影面積だけが判断材料とされており、風力発電施設が広域にわたって建設されても風車それぞれが「点」として捉えているようです。すなわち、環境影響評価に関わる法令は、現状では、風車それぞれが占有する面積が小さいと判断するため、風力発電施設の建設は、環境影響評価を回避でき、いわば無制限に推進されていくことになります。
 以上の、大型公共事業でありながら環境影響評価をまぬがれる実態は、大きな「法の穴」であり、自然保護行政の重大な欠陥であると言わざるを得ません。先般、環境省では、国立公園内における風力発電施設の建設について規制方針を発表しました。それは、風力発電施設の建設には自然保護上の問題があると認めたからと判断できます。しかし、国立公園外の地域における風力発電施設の建設に対して、国および北海道の環境影響評価に関する法令が効力を発揮しない現状は、大きな問題です。
 ちなみに、北海道では、すでに日本海側を中心に多数の風車が建設されており、いずれも事前の十分な自然環境調査および慎重な検討が行われませんでした。すでに、苫前、江差、室蘭など、大陸−北海道−本州間の渡りのルートにあたる地域において、多数の風車が建設され、環境影響評価が必ず必要であることがより鮮明になっております。また、関東では、面積の如何に関わらず、全ての開発行為に対して環境影響評価を義務づけている県があります。現行法令の欠陥を埋めることは、全国的な課題となっております。
 従って、まず、環境影響評価に関して、面積の制限を廃止し、面積の如何にかかわらず、環境影響評価として自然環境調査の実施を義務づけることを要望します。
6.北海道みずからが十分に検討し、種の保存に関する積極的な対応をすべきである
 本事業計画については、事業者が稚内市の定める「稚内市風力発電建設ガイドライン」に基づいて一応の調査を行い、それを元に「影響は回避もしくは低減できる」と結論づけております。しかし、その報告書を見る限りでは、そのように判断するだけの十分な調査が行われていないため、根拠を欠く結論となっております。他方で、我が国または北海道が指定する「希少野生動植物」に関して、環境影響評価に関わる法令の他に、種の保存法、北海道希少野生動植物保護条例、あるいは文化財保護法があります。特に本事業計画によるオジロワシやオオワシへの影響に関しては、北海道は、内部の検討委員会または第三者機関を設置して、専門家による慎重な検討が必要であると考えます。
 「宗谷岬ウィンドファーム」計画を現状の計画通りに進めることは、我が国、そして北海道の自然保護行政にとって将来に大きな禍根を残すと判断します。ここに、建設の是非を含めて、北海道として本事業計画に対する慎重な議論と検討を行われますよう、強く要望する次第です。
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