林野庁長官 石原 葵 様
2003年12月26日
北海道自然保護連合      代表 寺島 一男
大雪と石狩の自然を守る会  代表 寺島 一男
北海道自然保護協会      会長 俵   浩三
十勝自然保護協会        会長 安藤 御史
ナキウサギふぁんくらぶ     代表 市川 利美
大規模林道「平取・えりも線」2区間の事業継続決定に関する抗議および要請
林野庁は、第4回期中評価委員会の最終結論を受けて、12月18日「平取・えりも線」の「静内・三石区間」(一部変更)と「様似・えりも区間」の事業継続を決定しました。
私たち5団体は、これまでに林野庁および期中評価委員会に対して、事業継続には種々の問題があることを意見書や意見聴取会を通じて指摘してきました。期中評価委員会の検討結果は、私たちが指摘してきた問題をどのように検討し判断したか不明で、結果として建設主体である独立行政法人緑資源機構(以下緑資源機構)や推進に賛成する一部利益者の意向のみが反映されているようにみえます。
大規模林道の自然環境に関わる問題は、国を挙げて取り組むとした平成14年3月の「新生物多様性国家戦略」の見地から、また「莫大な建設費用を必要とする無駄な公共事業」として国の公共事業を見直す評価制度の本来の意義からして重大な問題を含んでいます。
今回の期中評価委員会の結論とそれを受けた林野庁の事業継続決定に対して、以下の諸点から強く抗議をするとともに改めて大規模林道の建設中止を含めた抜本的な再検討を要請します。
.大規模林道事業を推進するにあたって自然環境調査がきわめて不足している上、一部実施された環境アセスメントも不備・欠陥が多いこと。
(1)
1)
ナキウサギについて
平成13年度版「様似・えりも区間」アセスメント報告書によると、様似・えりも区間ではルート周辺にナキウサギは生息していないことになっているが、
@「ナキウサギふぁんくらぶ」は道有林155林班55小班において、6月8日、10月25日、11月3日にナキウサギの貯食をそれぞれ異なる場所で確認している。
A猿留川上流のルート付近で、「ナキウサギふぁんくらぶ」および長年ナキウサギ調査を続けている研究者が、ナキウサギの糞及び貯食を確認している。
このようにナキウサギ生息地がルート周辺にあるにも関わらず、生息地はないと結論付けたアセスはきわめて杜撰である。
2) 平成15年度に緑資源機構は、3回にわたってルート周辺を調査しているが、上記@及びAの場所も含めてルート沿いにただの一箇所もナキウサギ生息の痕跡を見いだしていない。林道から目視できる位置にあるガレ場Aの調査すらしていない。また、同機構が調査したガレ場の位置は、調査報告書を出すたびにずれているばかりか自身が測定したGPSデータ結果からもずれている。
(2) 林野庁は毎年シマフクロウについてモニタリング調査を行うとしているが、その内容や検討結果は一切関係者に知らされていない。シマフクロウの専門家によるモニタリングを行ない、科学的評価をしなければ、モニタリングの意味をなさないことはいうまでもない。
(3) 植物アセスについて
北海道自然保護協会が先般提出した林野庁宛の意見書補足で指摘しているように、平成13年度版「様似・えりも区間」アセスメント報告書で、北海道新産植物や道内における希少な新産報告となる植物を8種も挙げているが、これらはすべて評価の対象とすべきであるのに報告書ではそのうち2種しか評価の対象としていない。

以上のように、建設の再開及び続行の根拠となっている環境アセスメントは杜撰であり、
改めて信頼にたる科学的な調査を実施すべきである。また、現在、進められている工事は
直ちに中止し、大規模林道の計画自体も根本から再検討すべきである。
.ナキウサギ生息場所の人為的穴埋め問題に関して、緑資源機構が「ナキウサギふぁんくらぶ」に求めた抗議と謝罪を直ちに撤回させるとともに、林野庁はこの問題の真相を解明すること。

「ナキウサギふぁんくらぶ」が客観的な状況証拠に基づいて指摘した人為的穴埋め問題に対し、公的機関ともいえる緑資源機構が良識では考えられない稚拙な内部調査を実施し、それに基づいて同ふぁんくらぶを指弾した点は到底許されることではない。このような行為は公害・環境問題で過去に不幸な歴史を負った反省に立って、行政と市民が新たなパートナーシップを築こうとしている状況に逆行するものであり、何よりも行政に対する市民の信頼を裏切る行為である。
林野庁は緑資源機構との現在およびこれまでの関係から、緑資源機構に対し不当な同ふぁんくらぶに対する抗議と謝罪を撤回させるとともに、希少野生生物の生息地を破壊する悪質な行為として徹底した真相の解明をすべきである。
.台風10号により全面崩壊した「平取・えりも線」の「平取・新冠区間」の検証を早急に行うとともに、進行中の大規模林道を含めて大規模林道事業全体を災害面から新たな検討をすること。

平成15年8月の台風10号は、日高地方厚別川流域を中心に甚大な被害をもたらしたが、同河川の源流に建設された「平取・新冠区間」(1996年完成、現在門別町等に移管済)がほぼ全線にわたって被害を受けている。
現地を二度にわたって調査した「大雪と石狩の自然を守る会」の報告では、全長6.9qある道路の埋没・倒壊状況を崩壊の種類別にその長さを調べたところ、道路近くの山腹・谷筋が崩壊したことによるもの14ヵ所(延長約1.3q)、道路の上部法面が崩壊しことによるもの38ヶ所(延長約1.9q)、下部法面が崩壊したことによるもの15ヶ所(延長約0.4q)、合計67ヶ所延長3.6qあり、実に区間総延長の52%が埋没・倒壊していた。重要なことは、大規模林道の建設が招いたと考えられる道路法面の崩壊が崩壊延長の65%を占めていることで、専門家による詳細な原因の究明が必要である。
これまで大規模林道は災害時に代替道路として役に立つ道路とされてきたが、今回のケースからすれば逆に新たな災害を生み出し、災害を増大する可能性が出てきたことになり重大である。現在、道内で大規模林道が建設されている現場には、地質・地形上これを凌ぐ厳しいところが多数あり、災害面で心配される。現在、進行中の現場はもちろん大規模林
道事業全般について災害面から検証をし直す必要がある。
.この他にも大規模林道事業は、以下に述べるような問題があるので、林野庁は関係団体と積極的な話し合いを進めてこれらの回答をするとともに、その結果を随時広く市民に知らせることが必要である。
(1)大規模林道事業の効用が、建設される地域内の森林面積・蓄積や森林施業実績などで示されるが、具体的にはどのような関係と効用があるのか。また、森林整備の方向性やその中での位置づけが不明確である。
(2)「様似・えりも区間」は、黄金道路における通行不能の問題と関連して国道の迂回路として取り沙汰されているが、この間の問題は、現在、広域基幹林道や新たなトンネルの完成で遅くとも平成19年までにはかなり改善される状況がつくられつつあり、この状況との整合性が検討されていない。加えて迂回路、生活道として新たな道路が必要なら、大規模林道としてではなくこの問題として検討され整備されるべきである。
(3)大規模林道は全線の開通を待たず、区間完成ごとに所在地域市町村に移管されているが、長期間の工事と膨大な建設費用を伴う事業の実施内容について、また、移管後市町村が負担する維持管理費等について、地元住民の理解を得ているか疑問である。改めて地元住民に対しに対し十分な情報の提供を行い、地域振興を含めたトータルな議論が必要である。
(4)大規模林道事業の「あり方検討委員会」や「期中評価委員会」では、大規模林道の費用対効果について検討が回避されていると聞くが、これらの委員会の本来の目的は「行政機関が行う政策の評価に関する法律」「農林水産省政策評価基本計画」に基づいて、「事業の効果的・効率的な執行及び透明性を確保する観点」から「社会経済情勢等の変化」を踏まえて「事業実行の妥当性を検討する」ものであるから、ここを避けて通ることは許されない。
(5)「あり方検討委員会」や「期中評価委員会」の委員の選出が、林野庁当局のワンサイドで行われており、市民を含めた広い範囲の意向を反映する新たな選出枠組みが必要である。また、事業の評価に伴う市民や地元自治体の意見聴取の仕方はきわめて便宜的であり、その方法について透明性を含めて広く議論されるべきである。

貴庁は、今回の調査日程を自然保護団体と協議の上で決めていくと約束されておりました。それにもかかわらず、調査日程を一方的に決定し、わずか一週間前に告知してきたことは、約束違反であり不当であることを、ここに付け加えます。14日の現地調査の方法について、4人の専門家がそれぞれ何をどう調査するのかを明らかにしてください。
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