サハリン大陸棚油田・ガス開発にともなう環境問題に関する要望

サハリンエナジー・インベストメント社 最高責任者 Stephen H.McVeigh 御中
2003年11月7日
(社)北海道自然保護協会 会長 俵 浩三
当協会は、サハリンに近接する北海道において各種の公共事業等が自然生態系に与える深刻な影響に強い危惧をいだき、生物種及び生態系の保護に取り組んできた団体として、また原生的な自然が多数残るサハリン地域の自然に強い関心をもつ多数の会員を擁する団体として、サハリン大陸棚油田・ガス開発事業(サハリンUプロジェクト)の推進に関連し、事業推進主体であるサハリン・エナジーに対して、以下の事項の実施を要望します。
.ピリトゥン・ラグーン地域を中心に、コククジラの生息数、周辺海域の汚濁状況、コククジラへの影響を、さらに徹底的に調査すること
.オオワシに生息状況を再度、徹底的に調査するとともに、その保護に万全を期すること
.原油・天然ガスパイプラインのルート、敷設方法や工法等について、再度検討すること
.アニア湾内に計画中の掘削土砂投棄を中止し、湾外の安全地域への投棄に改めること
別記
.サハリン大陸棚油田・ガス開発については、もともと自然環境の厳しい極寒の地における開発であり、潮流が複雑であることから、事故による油流出が懸念されてきた。また、開発地域周辺の海岸線は繊細で、北方少数民族が生活し、アザラシ、アシカ、セイウチ、コククジラなどの海棲ほ乳類や、多数の希少植物が生息・生育することから、少数民族の生活への影響、自然環境への影響が合わせて危惧されてきたところである。しかるに、その後の事業の進展にともなって、これらの危惧を裏付けるような多数の情報が、直接・間接に、当協会にもたらされるようになった。
まず、ピリトゥン・ラグーン地域におけるコクジラについては、坑井の掘削、船舶の航行、ヘリコプターの運行、プラットフォームからの低周波音、海水の濁りなどにより、生息数が激減したことが地元の環境団体から指摘され、論争が続いている。したがって、コククジラについては、客観的で公正な議論をするための前提となる信頼に足るデータを収集するためのさらなる追加調査の実施を求める。
.社団法人・北海道野生生物保護公社(釧路市)とモスクワ州立大学研究者等が2003年7月ー8月に実施した日ロ合同調査によれば、サハリン北東部の湾周辺にはオオワシが約80ペア繁殖し、200個体以上が営巣することが判明した。さらに、成鳥、亜成鳥、幼鳥を含めると250個体以上が生息しているともいわれる。この個体数はサハリン・エナジー・インベストメント社がそのホームページで公表している環境影響評価書における調査個体数を大きく上回っており、その一部は、「サハリンT・Uプロジェクト」のパイプライン敷設予定地に隣接して営巣し、工事の進展に伴って営巣を放棄するおそれが指摘されている(朝日新聞2003年8月13日夕刊)。しかるに、オオワシは、国際自然保護連合のレッドリストで絶滅危惧種に指定され、日本の天然記念物でもあるのみならず、日ロ渡り鳥条約で両国が保護を義務付けられた鳥でもあり、ロシア共和国において絶滅が危惧されるような状況になれが、国際法違反としてその義務違反を、日本のみならず、世界各国の自然保護団体から激しく問われることになる。従って、貴社において、サハリン北東部一帯のオオワシの生息状況について再度徹底した調査を実施するとともに、保護対策に万全を期すことを強く求める(この項、社団法人・北海道野生生物保護公社より貴社に2003年8月27日付けで提出された「サハリン北部におけるオオワシ繁殖個体群に対するサハリンU開発の影響について(情報提供と要請)」参照)。
.サハリンを縦断する原油・天然ガスパイプラインについては、それが約1000以上の大小河川を横断することから、河川生態系、とりわけサケを中心とする魚類への影響が危惧され、ひいては漁業に依存する少数民族のへの影響が危惧されている。また、パイプラインが広範囲の湿地帯や24の活断層を通過することから、地震、災害、事故等による破断・流出も危惧されている。したがって、パイプライン敷設については、湿地、活断層の現状、河川生態系に及ぼす影響を再度調査するとともに、耐久性があり検査の容易な架橋方式への転換を含めて、再度、内容を見直すべきである。
.アニア湾プリゴロドノエ、コルサコフに建設中の石油積出港等の建設については、掘削した土砂約100万トンを湾内の沖合に投棄する計画であるが、湾内にはカラフトマスやズワイガニの好漁場であり、土砂投棄はこれら漁業資源に重大な損害を与える可能性がある。したがって、湾内投棄計画を中止し、土砂投棄現場を外洋の安全地域に変更すべきである。
以 上
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