国有林を良好に保全・管理することは政治の責任 俵 浩三
 北海道は森林王国である。北海道の森林面積は554万haで、それは全国の森林面積2,512万haの22%に当たる。そのうち国有林は全国に784万haあるが、その41%に当たる319万haは北海道にある。すなわち北海道は国有林王国でもあるのだ。
 その国有林(林野庁所管)は戦後の長い間、札幌・旭川・北見・帯広・函館と五つの営林局があって、木材生産などに大きく貢献してきた。しかし高度経済成長期が終わったころから林業経営に陰りが出はじめ、国有林経営は苦況になった。国有林は独立採算の特別会計で経営されていたが、1970年代から赤字に転落し、1998(平成10)年には全国の累積債務が3兆8千億円に達した。そして、それは林野庁当局の自助努力では解決できない規模であるため、同年、国有林は抜本改革された。  『林業白書』(平成11年版)はその抜本改革について、国有林を「国民の共通財産として、国民参加により、国民のために」管理経営し、名実ともに「国民の森林」とし、木材生産より「公益的機能の発揮に重点を置いた管理経営へと転換する」と宣言している。具体的には3兆8千億円のうち2兆8千億円を一般会計から返済し、残る1兆円を自助努力で今後50年以内に返済することとし、また北海道の5営林(支)局を北海道森林管理局ひとつに統合するなど、組織・人員の縮小をはかり、公益林を増大させたのである。
 そして、それに連動するように、「林業総生産の増大」を主目的としていた林業基本法は、公益林を重視し「森林の有する多面的機能の発揮」を主目的とする森林・林業基本法に抜本改正された。
 ところが近年の国有林は、自助努力により1兆円を返済する財源を生み出す必要が背景にあるためか、奥山の天然林伐採を加速させている。その一端は、河野昭一「危機に瀕した日本の国有林」(前号の会誌)、佐藤謙「国有林野における天然林の伐採とそれに関する考察」(今号の会誌)に報告されているとおり、資源の掠奪的な伐採に走り、「国民の森林」が「国有林の森林」に逆行した、憂慮すべき実態に陥っている。私たちがこのようなことを明らかにするのは、「国民の森林」を、「国民参加により」より良くしたいと願う活動の一部である。しかし、その声はなかなか届くべきところに届かない。
 ところで先に引用した『林業白書』には、「公益林の管理や整備についての必要な経費について、一般会計から繰り入れることを前提とした特別会計制度に移行する」と記されている。ということは、国有林の実態をつぶさに検証し、どうしたら「国民の森林」での資源の掠奪的伐採をやめさせ、国有林(公益林)を良好に保全・管理することができるのか、最適な方策を考え、それに必要な予算を計上することが、政治の責任といえる。
 1998(平成10)年の抜本改革からやがて10年を迎えようとするいま、「国民の森林」を名実ともに「国民の森林」とするためには何が必要なのか、為政者は真剣に考えるべきである。
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